流しコスト概論             2018/04/01 はまっちゃった人 ※当文書では、ニンテンドウカップ2000を模した例を挙げる ※簡略化のため、例中のポケモンの最大HPは12に統一する ※簡略化のため、急所・技外れ・追加効果・反動は考慮しない ※技名及び持ち物名については、必要に応じ漢字表記・アルファベット表記とする。 1.はじめに  ここでは、ポケモン対戦基礎理論(http://o-s.sub.jp/pokemon_riron/)では意図的に触れなかった「流しコスト」の概念について解説する。  「流しコスト」の概念を用いることで、形勢の有利・不利を簡易的に判断する指標を得られる他、様々な状況を統一的に記述することが可能となる。 2.流しコストの構成要素  「相手の場にいるポケモンに対して、こちらのポケモンを交代で出し、相手のポケモンを交代に追い込む(もしくは倒す)」ことを「流し」と呼ぶ。  「相手のポケモンを流すために必要となるHP量」と「流しコスト」と呼ぶ。  流しコストは、「潰しコスト」と「受けコスト」により構成される。    (1)潰しコスト    「1対1の対戦で勝つために必要なHP量」を「潰しコスト」と呼ぶ。    潰しコストは、以下の計算式により求まる。    ・相手のポケモンより素早さで上回る場合     「相手のポケモンの攻撃技で受けるダメージ×(相手のポケモンを倒すのに必要な攻撃回数−1)」    ・相手のポケモンに素早さで下回る場合     「相手のポケモンの攻撃技で受けるダメージ×相手のポケモンを倒すのに必要な攻撃回数」      ※相手のポケモンを倒すのに必要な攻撃回数は、「自分のポケモンの攻撃技で与えるダメージ÷相手のポケモンのHP」(小数点以下切り上げ)で求まる。          例1:55ガラガラ対50ガラガラ ※一般に「レベル55のガラガラ」を省略して「55ガラガラ」と呼ばれる。50についても同様。以下の例では当注記は省略する。        55ガラガラの地震:10ダメージ→相手のポケモンを倒すのに必要な攻撃回数は2回(10/12≒2(小数点以下切り上げ))        50ガラガラの地震: 8ダメージ→相手のポケモンを倒すのに必要な攻撃回数は2回(8/12≒2(小数点以下切り上げ))        素早さ     :55ガラガラ>50ガラガラ        →この例の場合、潰しコストは以下のようにして求めることができる。         55ガラガラの50ガラガラに対する潰しコスト:8*(2-1)=8         50ガラガラの55ガラガラに対する潰しコスト:10*2=20         55ガラガラは潰しコストを払うことができるが50ガラガラは潰しコストを払うことができないため、55ガラガラの勝利となる。         なお、この例では、仮に50ガラガラのHPが20を上回っていたとすると、50ガラガラが勝つことができる。     例2:55ガラガラ対50ガラガラ(太い骨なし)        55ガラガラの地震:10ダメージ→相手のポケモンを倒すのに必要な攻撃回数は2回(10/12≒2(小数点以下切り上げ))        50ガラガラの地震: 4ダメージ→相手のポケモンを倒すのに必要な攻撃回数は3回(4/12≒3(小数点以下切り上げ))        素早さ     :55ガラガラ>50ガラガラ        →この例の場合、潰しコストは以下のようにして求めることができる。         55ガラガラの50ガラガラに対する潰しコスト:4*(2-1)=4         50ガラガラの55ガラガラに対する潰しコスト:10*3=30         例1の場合と比較し、50ガラガラの攻撃力が低下することで、55ガラガラ側はより少ない潰しコストで50ガラガラを倒すことができる。         50ガラガラ側の潰しコストも上昇しているが、払いきれないことには変わりないため大きな意味は無い。     例3:55ガラガラ対50ガラガラ(高速移動+バトンタッチ後かつ太い骨なし)        55ガラガラの地震:10ダメージ→相手のポケモンを倒すのに必要な攻撃回数は2回(10/12≒2(小数点以下切り上げ))        50ガラガラの地震: 4ダメージ→相手のポケモンを倒すのに必要な攻撃回数は3回(4/12≒3(小数点以下切り上げ))        素早さ     :55ガラガラ<50ガラガラ        →この例の場合、潰しコストは以下のようにして求めることができる。         55ガラガラの50ガラガラに対する潰しコスト:4*2=8         50ガラガラの55ガラガラに対する潰しコスト:10*(3-1)=20         例2の場合と比較し、50ガラガラの素早さが逆転することで、55ガラガラに攻撃技1回分多くの潰しコストを負担させることができる。         50ガラガラ側が潰しコストを払いきれないことには変わりないが、もし55ガラガラのHPが5〜8の間であれば勝敗を逆転させることができる。     例4:55ガラガラ対50ガラガラ(高速移動+バトンタッチ後)        55ガラガラの地震:10ダメージ→相手のポケモンを倒すのに必要な攻撃回数は2回(10/12≒2(小数点以下切り上げ))        50ガラガラの地震: 8ダメージ→相手のポケモンを倒すのに必要な攻撃回数は2回(8/12≒2(小数点以下切り上げ))        素早さ     :55ガラガラ<50ガラガラ        →この例の場合、潰しコストは以下のようにして求めることができる。         55ガラガラの50ガラガラに対する潰しコスト:8*2=16         50ガラガラの55ガラガラに対する潰しコスト:10*(2-1)=10         例1の場合と比較し、55ガラガラが攻撃を受ける回数が1回増え、50ガラガラが攻撃を受ける回数が1回減るため、勝敗が逆転する。         このように、相手のポケモンを倒すのに必要な攻撃回数の差がない状況で素早さが逆転すると勝敗も逆転するため、価値が高い。         (逆転前に素早さが高かった側の潰しコスト増大にも、素早さが低かった側の潰しコスト低下にも意味が出る)  (2)受けコスト    「交代際に打たれる相手の攻撃技に耐えるために必要なHP量」を「受けコスト」と呼ぶ。    「相手のポケモンの攻撃技で受けるダメージ」が「受けコスト」となる。  (3)流しコスト    「潰しコスト」と「受けコスト」を足し合わせたものを「流しコスト」と呼ぶ。    「流しコスト」を払うために必要なHPが残っているポケモンには「流し」の役割を持たせることができる。     ※交代際の攻撃で相手のポケモンのHPを減少させた場合、潰しコストの計算で用いる「相手のポケモンのHP」も減少する点に注意する。         例5:50ガラガラ(太い骨なし)に対して55ガラガラを交代で出す        55ガラガラの地震:10ダメージ→相手のポケモンを倒すのに必要な攻撃回数は2回(10/12≒2(小数点以下切り上げ))        50ガラガラの地震: 4ダメージ→相手のポケモンを倒すのに必要な攻撃回数は2回(4/(12-4)≒2(小数点以下切り上げ))        素早さ     :55ガラガラ<50ガラガラ        →この例の場合、55ガラガラの50ガラガラに対する流しコストは以下のようにして求めることができる。         55ガラガラの50ガラガラに対する潰しコスト:4*(2-1)=4         55ガラガラの50ガラガラに対する受けコスト:4         55ガラガラの50ガラガラに対する流しコスト:4+4=8         55ガラガラは50ガラガラに対する流しコストを払うことができるため、50ガラガラに交代で出した後に相手の50ガラガラを交代に追い込むことができる。         (50ガラガラ側が交代しない場合はそのまま倒すことができる)     例6:50ガラガラに対して55ガラガラを交代で出す        55ガラガラの地震:10ダメージ→相手のポケモンを倒すのに必要な攻撃回数は2回(10/12≒2(小数点以下切り上げ))        50ガラガラの地震: 8ダメージ→相手のポケモンを倒すのに必要な攻撃回数は1回(8/(12-8)≒1(小数点以下切り上げ))        素早さ     :55ガラガラ<50ガラガラ        →この例の場合、55ガラガラの50ガラガラに対する流しコストは以下のようにして求めることができる。         55ガラガラの50ガラガラに対する潰しコスト:8*(2-1)=8         55ガラガラの50ガラガラに対する受けコスト:8         55ガラガラの50ガラガラに対する流しコスト:8+8=16         55ガラガラは50ガラガラに対する流しコストを払うことができないため、50ガラガラに交代で出した後に相手の50ガラガラを交代に追い込むことはできない。         ただし、55ガラガラを交代で出すことで、50ガラガラ側に10の潰しコスト(10*1=10)を払わせるか、交代させるかの選択を迫ることならできる。 3.流しコストによるサイクルの説明  (1)サイクルとは    「相手の場にいるポケモンに対して有利なポケモンを交代で出すことをお互いに繰り返す状況」を「サイクル」と呼ぶ。    交代際の攻撃技に耐えられなくなり先にポケモンを倒されることでサイクルは崩壊し、例外的な状況を除いて先にポケモンを倒された側が敗北する。    サイクルの概念は、流しコストの概念により記述することができる。     例7:プレイヤー1(場カイリキー・控サンダー)対プレイヤー2(場カビゴン・控クロバット)        カイリキーのクロスチョップ:カビゴン に 8ダメージ、クロバットに 2ダメージ        サンダー の10万V   :カビゴン に 3ダメージ、クロバットに18ダメージ        カビゴン の捨て身タックル:カイリキーに 5ダメージ、サンダー に 6ダメージ        クロバットの目覚めるパワー:カイリキーに 6ダメージ、サンダー に 1ダメージ        素早さ          :クロバット>サンダー>カイリキー>カビゴン        →この例の場合、サイクルの概念に従い試合を展開すると、以下のようになる。          ターン0 :カイリキー(HP12)対カビゴン(HP12)          ターン1 :カビゴンからクロバットに交代、カイリキークロスチョップをクロバットに(HP12→10)          ターン2 :カイリキーからサンダーに交代、クロバット目覚めるパワーをサンダーに(HP12→11)          ターン3 :クロバットからカビゴンに交代、サンダー10万Vをカビゴンに(HP12→9)          ターン4 :サンダーからカイリキーに交代、カビゴン捨て身タックルをカイリキーに(HP12→7)          ターン5 :カビゴンからクロバットに交代、カイリキークロスチョップをクロバットに(HP10→8)          ターン6 :カイリキーからサンダーに交代、クロバット目覚めるパワーをサンダーに(HP11→10)          ターン7 :クロバットからカビゴンに交代、サンダー10万Vをカビゴンに(HP9→6)          ターン8 :サンダー10万Vをカビゴンに(HP6→3)、カビゴン捨て身タックルをサンダーに(HP10→4)          ターン9 :サンダー10万Vをカビゴンに(HP3→0)、カビゴン倒れてクロバットを繰り出す          ターン10:クロバット目覚めるパワーをサンダーに(HP4→3)、サンダー10万Vをクロバットに(HP8→0)                プレイヤー1の勝利         重要な点について、流しコストの概念を用いて説明したいと思う。         ターン1では、クロバットはカイリキーに対する流しコストを払うことができる(2*(2-1)+2=4)。そのためカイリキーを交代に追い込むことができる。         以下、流しコストを払うことができる場面が続くが、ターン7で初めて流しコストを払うことができない場面が発生する。         カビゴンのサンダーに対する流しコストは9(3*2+3=9)。この時点でのカビゴンのHPは9であるため、この時点でサンダーに対する流し役割を失っている。         そのため、サイクルが崩壊し、プレイヤー2は敗北した。         (なお、ターン7でクロバットが交代しなかったとしても結果は同じである)  (2)流しの回数の概念〜有利・不利を簡易的に判断する指標〜    以上のように、流しコストを払うことができる回数は限られている。    ここでは、流しコストを払うことができる回数を「流しの回数」と呼ぶことにする。    流しの回数は、以下の計算式で求めることができる。    「(HP−潰しコスト)÷受けコスト−1」(小数点以下切り上げ)        流しの回数が最も少ないポケモンが一番最初に倒れる。    流しの回数が同等の場合は、先に交代で繰り出すポケモンが一番最初に倒れる。    サイクルの概念を考えると、例外的な状況を除き、流しの回数が最も少ないポケモン、流しの回数が同等の場合は先に交代で繰り出すポケモンを持つ側が敗北する。    以上より、流しの回数は形勢の有利・不利を簡易的に判断する指標となる。    例7では、ターン0時点での流しの回数は以下の通りであった。     カイリキーのカビゴン に対する流しの回数: 1回((12-5)/5-1≒1(小数点以下切り上げ))     サンダー のクロバットに対する流しの回数:10回((12-1)/1-1=10)     カビゴン のサンダー に対する流しの回数: 1回((12-6)/3-1=1)     クロバットのカイリキーに対する流しの回数: 4回((12-2)/2-1=4)     交代で繰り出す順番           :クロバット→サンダー→カビゴン→カイリキー     カイリキーとカビゴンの流しの回数は共に1回であったが、カビゴンの方が先に繰り出されるためカビゴンを持つプレイヤー2側が敗北した。  (3)例外的な状況の考察〜サポートの概念〜    (2)では「例外的な状況を除き、流しの回数が最も少ないポケモン、流しの回数が同等の場合は先に交代で繰り出すポケモンを持つ側が敗北する」と書いたが、    「例外的な状況」は「サポート」と呼ばれる概念によりもたらされる。    「サポート」とは「何らかの方法で自分の控えのポケモンが持つ流し役割を補助する」ことを意味する。    「サポート」と言うと補助技(リフレクター、バトンタッチ等)を想像するかもしれないが、この定義に従えば攻撃技によりHPを削ることもサポートとなり得る。         例8:プレイヤー1(場カイリキー・控サンダー)対プレイヤー2(場カビゴン・控クロバット)        例7のクロバットの「目覚めるパワー」を「捨て身タックル」に変更する。        カイリキーのクロスチョップ:カビゴン に 8ダメージ、クロバットに 2ダメージ        サンダー の10万V   :カビゴン に 3ダメージ、クロバットに18ダメージ        カビゴン の捨て身タックル:カイリキーに 5ダメージ、サンダー に 6ダメージ        クロバットの捨て身タックル:カイリキーに 3ダメージ、サンダー に 3ダメージ         素早さ          :クロバット>サンダー>カイリキー>カビゴン        カイリキーのカビゴン に対する流しの回数: 1回((12-5)/5-1≒1(小数点以下切り上げ))        サンダー のクロバットに対する流しの回数: 2回((12-3)/3-1=2)        カビゴン のサンダー に対する流しの回数: 1回((12-6)/3-1=1)        クロバットのカイリキーに対する流しの回数: 3回((12-4)/2-1=4)        交代で繰り出す順番           :クロバット→サンダー→カビゴン→カイリキー        →サンダーのクロバットに対する流しの回数が大きく減っているが、それでも依然として流しの回数の概念から考えればプレイヤー1が有利に見える。         では、試合の流れを追うこととする。          ターン0 :カイリキー(HP12)対カビゴン(HP12)          ターン1 :カビゴンからクロバットに交代、カイリキークロスチョップをクロバットに(HP12→10)          ターン2 :カイリキーからサンダーに交代、クロバット捨て身タックルをサンダーに(HP12→9)          ターン3 :クロバットからカビゴンに交代、サンダー10万Vをカビゴンに(HP12→9)          ターン4 :サンダーからカイリキーに交代、カビゴン捨て身タックルをカイリキーに(HP12→7)          ターン5 :カビゴンからクロバットに交代、カイリキークロスチョップをクロバットに(HP10→8)          ターン6 :カイリキーからサンダーに交代、クロバット捨て身タックルをサンダーに(HP9→6)          ターン7 :クロバットからカビゴンに交代、サンダー10万Vをカビゴンに(HP9→6)          ターン8 :サンダーからカイリキーに交代、カビゴン捨て身タックルをカイリキーに(HP8→4)          ターン9 :カビゴンからクロバットに交代、カイリキークロスチョップをクロバットに(HP8→6)          ターン10:クロバット捨て身タックルをカイリキーに(HP7→4)、カイリキークロスチョップをクロバットに(HP6→4)          ターン11:クロバット捨て身タックルをカイリキーに(HP4→1)、カイリキークロスチョップをクロバットに(HP4→2)          ターン12:クロバット捨て身タックルをカイリキーに(HP1→0)、カイリキー倒れてサンダーを繰り出す          ターン13:クロバット捨て身タックルをサンダーに(HP6→3)、サンダー10万Vをクロバットに(HP2→0)、クロバット倒れてカビゴンを繰り出す          ターン14:サンダー10万Vをカビゴンに(HP6→3)、カビゴン捨て身タックルをサンダーに(HP3→0)                プレイヤー2の勝利         以上のように、流しの回数の概念に反してプレイヤー2が勝利した。         鍵となるのはターン6である。クロバットの攻撃技によりサンダーのHPは6になっており、カビゴン側から見た必要な攻撃回数が1回減った。         ターン3の時点でカビゴンのサンダーに対する流しの回数は0回((9-6)/3-1=0)であるが、         ターン2とターン6でクロバットがサンダーのHPを削ることで、ターン6の時点でカビゴンのサンダーに対する流しの回数が復活した((9-3)/3-1=1)。         これは、クロバットの捨て身タックルがカビゴンに対するサポートとして機能した例であると言うことができる。         (なお、ターン10でカイリキーが交代したとしても結果は同じである) 4.流しコストの応用事例  流しコストの概念により、複雑な状況を統一的に記述できることを示す。  ここでは、「交代読み交代」「積み技」「吠える・吹き飛ばし」の3つを例として挙げる。    (1)交代読み交代の記述    「交代読み交代」とは、相手の交代を読み同時に交代することを指す。    交代読み交代が成功すれば、相手の交代先のポケモンに受けコストを負担させない代わりに、自分の交代先のポケモンにも受けコストを負担させないようにすることができる。    相手の交代先のポケモンに対して有力な技を打てず、かつ控えの自分のポケモンの流しの回数が逼迫している場合に効果を発揮する。    サイクルを1回スキップすると見ることもできる。    スキップしている分、自分の場に出していたポケモンは早い段階で再び交代で出すことになるため、自分の場にいるポケモンの流しの回数に余裕がある必要がある。    かいつまんで言うと、自分の各々のポケモンの流しの回数の差を平準化し、流しの回数の概念上で優位に立つためのテクニックと言える。    ただし、交代読み交代が読まれると、相手のポケモンに対して不利なポケモンに交代してしまう上、交代先のポケモンは相手の攻撃技を1回受けてしまうため、リスクが大きい。     例9:プレイヤー1(場カイリキー・控サンダー)対プレイヤー2(場カビゴン・控クロバット)        カイリキーのクロスチョップ:カビゴン に 8ダメージ、クロバットに 2ダメージ        サンダー の10万V   :カビゴン に 3ダメージ、クロバットに18ダメージ        カビゴン の捨て身タックル:カイリキーに 5ダメージ、サンダー に 6ダメージ        クロバットの目覚めるパワー:カイリキーに 6ダメージ、サンダー に 1ダメージ        素早さ          :クロバット>サンダー>カイリキー>カビゴン        →例7ではプレイヤー1が勝利したが、ここでプレイヤー2がサンダーへの交代を読んで同時にカビゴンに交代すると条件を変え、試合の流れを追う。          ターン0 :カイリキー(HP12)対カビゴン(HP12)          ターン1 :カビゴンからクロバットに交代、カイリキークロスチョップをクロバットに(HP12→10)          ターン2 :カイリキーからサンダーに交代、クロバットからカビゴンに交代          ターン3 :サンダーからカイリキーに交代、カビゴン捨て身タックルをカイリキーに(HP12→7)          ターン4 :カビゴンからクロバットに交代、カイリキークロスチョップをクロバットに(HP10→8)          ターン5 :カイリキーからサンダーに交代、クロバットからカビゴンに交代          ターン6 :サンダーからカイリキーに交代、カビゴン捨て身タックルをカイリキーに(HP7→2)          ターン7 :カビゴンからクロバットに交代、カイリキークロスチョップをクロバットに(HP8→6)          ターン8 :カイリキーからサンダーに交代、クロバットからカビゴンに交代          ターン9 :サンダー10万Vをカビゴンに(HP12→9)、カビゴン捨て身タックルをサンダーに(HP12→6)          ターン10:サンダー10万Vをカビゴンに(HP9→6)、カビゴン捨て身タックルをサンダーに(HP6→0)、サンダー倒れてカイリキーを繰り出す          ターン11:カイリキークロスチョップをカビゴンに(HP6→0)、カビゴン倒れてクロバットを繰り出す          ターン12:クロバット目覚めるパワーをカイリキーに(HP2→0)                プレイヤー2の勝利         以上のように、交代読み交代によりカビゴンとクロバットの流しの回数の差を平準化することで、形勢を逆転することができた。         (なお、ターン9でサンダーが交代したとしても結果は同じである)         ただし、ターン8で交代読み交代を読まれると、以下のような流れとなりプレイヤー2は敗北する。          ターン8 :クロバットからカビゴンに交代、カイリキークロスチョップをカビゴンに(HP12→4)          ターン9 :カビゴンからクロバットに交代、カイリキークロスチョップをクロバットに(HP6→4)          ターン10:カイリキーからサンダーに交代、クロバットからカビゴンに交代          ターン11:サンダー10万Vをカビゴンに(HP4→1)、カビゴン捨て身タックルをサンダーに(HP12→6)          ターン12:サンダー10万Vをカビゴンに(HP1→0)、カビゴン倒れてクロバットを繰り出す          ターン13:クロバット目覚めるパワーをサンダーに(HP12→11)、サンダー10万Vをクロバットに(HP4→0)                プレイヤー1の勝利  (2)積み技の記述    自分のステータスをアップさせる技を「積み技」と表記することにする。    現在のターンで攻撃技を用いることで相手に受けコスト・潰しコストを与えることができるが、積み技を使用した場合はこの機会が犠牲となる。    その代わり、次のターンより相手により大きい受けコスト・潰しコストを与えることができる。    「剣の舞」の場合は、次のターンより相手に約2倍のダメージを与えられるようになることで、より大きい受けコスト・潰しコストを負担させることができる。    次のターンより永続的に約2倍のダメージを与えられるため強力な技に思えるが、    元より潰しコストがゼロの場合(先手の攻撃技1発で倒されてしまう場合)は効果がない。    また、元より攻撃技で相手に与えるダメージが小さい場合は、ダメージ量が2倍になったとしても大きな効果は見込めない。    そのため、元より攻撃技で相手に与えるダメージが大きく、かつ相手より素早いポケモン若しくは倒されにくいポケモンで使うと効果的である。    ニンテンドウカップ2000の場合は、元より攻撃技で大きなダメージを与えられるガラガラに、素早さ面・耐久面のサポートを行った上で剣の舞を使うのが代表的な戦術となる。     例10:プレイヤー1(場ガラガラ・控ライコウ)対プレイヤー2(場ハガネール・控スターミー)        ガラガラ の地震     :ハガネールに10ダメージ、スターミーに10ダメージ        ライコウ の10万V   :ハガネールに 0ダメージ、スターミーに10ダメージ        ハガネールの地震     :ガラガラ に 3ダメージ、ライコウ に10ダメージ        スターミーのハイドロポンプ:ガラガラ に10ダメージ、ライコウ に 5ダメージ        素早さ          :スターミー>ライコウ>ガラガラ>ハガネール        →ガラガラが剣の舞を使わない場合、以下の流れになりプレイヤー1が敗北する。          ターン0 :ガラガラ(HP12)対ハガネール(HP12)          ターン1 :ハガネールからスターミーに交代、ガラガラ地震をスターミーに(HP12→2)          ターン2 :スターミーハイドロポンプをガラガラに(HP12→2)、ガラガラ地震をスターミーに(HP2→0)、スターミー倒れてハガネールを繰り出す          ターン3 :ガラガラ地震をハガネールに(HP12→2)、ハガネール地震をガラガラに(HP2→0)、ガラガラ倒れてライコウを繰り出す          ターン4 :以降省略(ライコウはハガネールを倒す手段を持たず、ライコウが倒れる)                プレイヤー2の勝利         敗因は、ターン1の時点でガラガラが対スターミーと対ハガネールの2匹分の潰しコストを負担できない状況にあったためである。         スターミーに対する潰しコストは10(10*1=10)、ハガネールに対する潰しコストは3(3*(2-1)=3)であり、ガラガラの最大HPである12を超えている。         ここで、ターン1でガラガラが剣の舞を使ったとする。この場合はプレイヤー1が勝利する。          ターン1 :ハガネールからスターミーに交代、ガラガラ剣の舞          ターン2 :スターミーハイドロポンプをガラガラに(HP12→2)、ガラガラ地震をスターミーに(HP12→0)、スターミー倒れてハガネールを繰り出す          ターン3 :ガラガラ地震をハガネールに(HP12→0)                プレイヤー1の勝利         ターン1で剣の舞を使い、スターミー及びハガネールに対する潰しコストを軽減させたことが、プレイヤー1の勝因となっている。         ターン1でスターミーに受けコストを負担させる機会を失っているが、相手のポケモンを倒すのに必要な攻撃回数を減らすことでガラガラの潰しコストを軽減させた。         スターミーに対する潰しコストは10(10*1=10)、ハガネールに対する潰しコストは0(3*(1-1)=0)であり、ガラガラの最大HPである12以内に収まっている。     例11:プレイヤー1(場ガラガラ・控ライコウ)対プレイヤー2(場ゴローニャ・控スターミー)        ガラガラ の地震     :ゴローニャに12ダメージ、スターミーに10ダメージ        ライコウ の10万V   :ゴローニャに 0ダメージ、スターミーに10ダメージ        ゴローニャの地震     :ガラガラ に 4ダメージ、ライコウ に11ダメージ        スターミーのハイドロポンプ:ガラガラ に10ダメージ、ライコウ に 5ダメージ        素早さ          :スターミー>ライコウ>ゴローニャ>ガラガラ        →しかし、ガラガラよりも素早さで勝るゴローニャをライコウ対策として使われた場合は、剣の舞による逆転劇は起こらない。          ターン0 :ガラガラ(HP12)対ゴローニャ(HP12)          ターン1 :ゴローニャからスターミーに交代、ガラガラ剣の舞          ターン2 :スターミーハイドロポンプをガラガラに(HP12→2)、ガラガラ地震をスターミーに(HP12→0)、スターミー倒れてゴローニャを繰り出す          ターン3 :ゴローニャ地震をガラガラに(HP2→0)、ガラガラ倒れてライコウを繰り出す          ターン4 :以降省略(ライコウはゴローニャを倒す手段を持たず、ライコウが倒れる)                プレイヤー2の勝利         ガラガラはゴローニャに対して先手を取ることができず、潰しコストを0にすることができなかった(4*1=4)ため、プレイヤー1の敗北につながった。         プレイヤー2側から見れば、ハガネールのガラガラ(剣の舞後、HP2)に対する潰しコストは20であった(20*1=20)。         しかし、ゴローニャに変更することで、潰しコストを0(24*(1-1)=0)にすることができた。         なお、剣の舞を使わないガラガラ(HP2)に対しては、ハガネールなら潰しコスト10(10*1=10)、ゴローニャなら0(12*(1-1)=0)であった。         このように、元より潰しコストがゼロの場合(先手の攻撃技1発で倒されてしまう場合)には剣の舞は効果を発揮しないことがわかる。    (3)吠える・吹き飛ばしの記述    吠える・吹き飛ばしにより、相手の場にいるポケモンを強制的に他のポケモンに交代させることができる。    この技の用途は色々とあるが、ここでは受けコストを肩代わりする用途について記述する。    攻撃技を用いて相手の場にいるポケモンを交代に追い込むためには、受けコストを支払う必要がある。    しかし、耐久力に不足のあるポケモンにとっては、受けコストの負担は大きなものになる。    そこで、耐久力が十分で吠える・吹き飛ばしを持ったポケモンをもう一体用意することで、そのポケモンに受けコストを肩代わりさせることができる。    (耐久力に不足があるポケモンは、後のターンに交代読み交代で、若しくはサポートしてから場に出すことになる)    ただし、吠える・吹き飛ばしを用いて強制的に交代させた場合は、交代先のポケモンに受けコストを負担させられないことに注意する必要がある。    吠える・吹き飛ばしの有効性は一見わかりにくい。    しかし、流しコストの概念により「受けコストを肩代わりする」「相手の交代先のポケモンには受けコストを負担させることができない」と記述することが可能となる。    流しコストの概念を用いて統一的に記述することにより、攻撃技等の他の手段と有効性の比較をすることが容易になる。    なお、ニンテンドウカップ2000の場合は、攻撃力に不足があるが耐久力に優れるエアームドがこの役割を担うことが多い。    エアームドは、吹き飛ばしを持つだけで様々な相手に対して役割を担うことができ、吹き飛ばしが最重要技と言っても差し支えない程の効果がある。     例12:プレイヤー1(場カビゴン・控エアームド、スターミー)対プレイヤー2(場ガラガラ・控ハガネール、ハピナス)        ガラガラ の地震     :エアームドに 0ダメージ、スターミーに10ダメージ        ガラガラ の岩雪崩    :エアームドに 3ダメージ        カビゴンは地震所持で、ハガネールにも4ダメージを与えられる。ガラガラ・ハピナスに対しては捨て身タックルで5〜6のダメージを与えられる。        エアームドのドリル嘴はダメージが小さく、各ポケモンに1〜2のダメージしか与えられない。        スターミーのハイドロポンプはガラガラ・ハガネールを1発で倒すが、ハピナスには2のダメージしか与えられない。        ガラガラはカビゴンやエアームドと1対1で勝てるが、HPの半分以上を失う。スターミーには勝てない。        ハガネールは大爆発を所持しており、自分が倒れる代わりにカビゴンやスターミーに10以上のダメージを与えられる。        ハピナスは雷を所持しており、カビゴンには1のダメージしか与えられないが、エアームドやスターミーには8のダメージを与えられる。        素早さ          :スターミー>エアームド>ハピナス>ガラガラ>カビゴン>ハガネール        →この例では、1ターン目にスターミーを交代で出すことは避けたい。         スターミーを出してしまえば受けコスト10を支払うことになってしまうので、以降の展開が苦しくなってしまう。         そこで、エアームドを交代で出すことが有効となる。         また、エアームドを交代で出したとしても、そのままガラガラと戦うことは避けたい。         エアームドが倒されてしまえば、大爆発を持つハガネールに対する対抗手段を失うからだ。         そこで、エアームドで吹き飛ばしを使うことが有効となる。         ニンテンドウカップ2000では吹き飛ばしを使ったターンは後攻となるため、ガラガラの岩雪崩を1発もらってしまう。         しかし、吹き飛ばしを使うことで、エアームドが受けコスト3でガラガラを交代させたのと同じ意味になる。         ガラガラは耐久力で劣り、一度場からどかしてしまえば再び場に出すのは困難である。         (ガラガラを交代で出そうとすれば大きな受けコストを支払うことになる)         このように、耐久力に優れるポケモンが吠える・吹き飛ばしで受けコストを肩代わりすることには有効性がある。